困ったときに、まずどこに行けばよいのか
札幌で困ったときにどこに行けばよいのか、カウンセラーの相談室? 精神科医のいる心療内科クリニック? それともソーシャル・ワーカーのところ? このページは、そんな疑問にお答えします。こちらは札幌のおすすめのカウンセリングルーム・トポス心理療法オフィスです。
さて、医療の世界ではプライマリー・ケアなる言葉があります。簡単に言うと、調子が悪くなったときに一番最初にわれわれが受けるケアのことです。その役割を担うのは、近所のお医者さんたち、つまり家庭医と呼ばれる人たちです。そこを受診すると、大したことないとか、専門の病院に行った方がよいとか、適切な助言と紹介が行われ、患者は次のステップに進むことになります。
では、カウンセリングの世界ではどのような仕組みになっているのでしょうか。答えを言えば、カウンセリングの世界も、同様の流れにしたがっているように思います。
あなたが、あるカウンセラーのところを訪れたとしましょう。自分にはセラピーが必要かもしれないと感じて、まずは予約してみたとします。そして、初回面接で自分の苦しみやさしあたりの問題を話すと、カウンセラーは、ではこうしましょうとか、ああしましょうとか、自分なりに判断してお話してくれるはずです。その場合の選択肢は、おそらく次のようになるはずです。
1.心理カウンセリングを開始する。
2.他のカウンセラーを紹介する。
3.心療内科・精神科クリニック等、医療機関の受診を勧める。
4.社会保障を受けるために、ソーシャル・ワーカーや社会保険労務士への相談を勧める。
5.弁護士の法律相談を勧める。
6.その他の方法を勧める(何も行わないほうがよいという助言を含む)。
心理カウンセラーとしては、自分のところで精神療法をお引き受けすることのできる問題なのか、出来ない問題なのか、カウンセリングというかたちの援助が相談者にとって適切なのか、医師の薬物療法を考えたほうがよいのか、そのようなことを合わせて考えながら、ひとつの判断に至るはずです。ただ、その判断には、おそらくカウンセラーによって個人差があるでしょう。なにせ、身体医学とは異なり、眼に見えない心をもつ生きた人間が対象となるわけですから。
冒頭の問いはこうでした。「困ったときにどこに行けばよいのか」です。答えはこうなります。困ったとき、どこでもよいですから、医療機関なり、相談機関を気軽に訪れてください。そうすれば、必ず、何らかの助言があるはずです。
札幌も相談機関が増えました。私がこの世界に足を踏み入れた頃、いま(2010年)から数えてかれこれ20年前ですが、その頃はクリニックも、開業するカウンセラーも、いまほどいなかったと思います。相談に行くにせよ、そのような場所があまりなかったのです。いまはどうでしょう。札幌にはさまざまな相談機関ができました。少なくとも倍増しているでしょう。クリニックも、カウンセリングルームも、北海道や札幌市で管轄する公的相談機関も、大学の相談センターも。いまは、たくさんあるのでどこに行けばよいのか分からない時代になったのかもしれません。
ここまでは、一般論をお話しました。次は、カウンセリングにかかわる現実的な問題です。
いわゆる口コミ
もしかするとあなたは、相談に訪れようとする先の評判がどうなのか気になるのかもしれません。いわゆる「口コミ」の部分です。「札幌でどこかいいところないかしら」「ああ、あそこは○○みたい。先生がとても丁寧に聞いてくれる」「あそこは××ね。○○みたいよ」
けれども、人間は自分の悩みを信頼できる人にしか話さないでしょうから、「カウンセリングでいいところないかしら」とは、なかなか周囲に尋ねることが難しいかもしれません。ネット上の掲示板で「札幌でいいところありませんか」等と訪ねるのも・・・。
運よく評判を耳にすることができたとしても、受ける印象は十人十色ですから、実際に行ってみると違っていた、なんていうこともあるはずです。
結論を言えば、実際にそこに行ってみないかぎり、やはり自分との相性は分からないものなのです。
精神科の薬は飲みたくない
クリニックに行って薬を飲んだ方がよいのか、薬を飲まないで精神療法を受けるのがよいのか分からないと言う方はともかくとして、薬を飲みたくないという明確な理由をもって精神療法を求める人たちもいます。精神科の薬は怖い、精神療法で何とかしたい、そのようなニーズです。
この場合、クリニックでも精神療法でもよいから、とにかく自分に適した方に通いたいという開かれたスタンスとは違います。一方が嫌だから他方にしたいわけです。
このような相談者が訪れたとき、カウンセラーはどうするのか。おそらく相談者の気持ちに共感しつつ、そのニーズを最大限に尊重しようとするでしょう。しかし、カウンセラーが、精神療法ではなく薬物療法のほうが益するに違いないと判断した場合には、クリニックの受診を勧めるはずです。あるいは、精神療法と並行して、薬物療法を勧めるはずです。
一般的に、精神科の薬は怖いと口にする方が少なくないように思います。市販されている胃腸薬とはわけが違うと言うわけです。以前精神科に勤めていた私としては、用法・用量を守って服薬するかぎり大きな害はないと感じているのですが、薬に対する私たちの恐れは、あって当然のことと思います。薬に関する話し合いは、本来であれば精神科医とするものです。けれども、クリニック受診を勧めるために、薬に対する「恐れ」について取り上げて(薬効ではなく)、じっくりと話し合うこともカウンセラーの務めなのかもしれません。
おわりに
繰り返しになりますが、札幌には随分と医療機関や相談機関が増えました。精神療法を受けてみたいが、クリニックがたくさんあってどこに行けばよいのか分からない、カウンセラーがたくさん開業しているので目移りがする、札幌はそのような時代に突入したかのようです。
さしあたりどの機関を訪ねてもよいでしょうが、あるていど考えがあるのなら、あらかじめ的を絞った方がよいかもしれません。
・薬を飲むことを少し考えているのであれば、クリニックを受診しましょう。
・精神療法を考えているのであれば、相談機関か、カウンセラーのいるクリニックを受診しましょう(精神科医が精神療法を行っているところもあるでしょう)。
・料金は様々です。精神療法を受ける場合には、必ず料金体系を確認しましょう。
・社会保障や法律にかかわる相談は、弁護士やソーシャル・ワーカー等にしましょう。
最後に少しだけ宣伝させてください。私の相談室は札幌市内ではなく、江別市内にあります。JR札幌駅から野幌駅まで20数分ですから、アクセスもよいと思います。「札幌の」と言うよりも「札幌圏の」と言った方が的を射ていて、幅広い地域の方々にご利用いただいております。料金も無料ですから、お気軽にご相談ください。
(追記:2019年9月)
この記事は、いまから10年ほど前に古いホームページに書いたものです。ほぼそのまま再掲載しました。自分や共同研究者のカウンセリングルームを宣伝する文章があったりして、ちょっとお見苦しいかもしれません。
さて、この記事を書いた10年前と今では、少し変化したことがあります。まず、札幌市内の心療内科・精神科クリニックがさらに増加したと思います。それから、内容は色々ですが、カウンセラーたちが開業しているカウンセリングルームも増えた感じがしています。お悩みや心の苦しみを抱えた相談者の方々にすると、選択肢が増えたので、その意味ではよかったのかもしれません。しかし、その反面、やはりどこへ行けばよいのか、より一層迷ってしまう時代になったのかもしれません。
10年前と比較して、薬に対する考え方が私自身変わりつつあります。この記事では、どちらかと言えば肯定的なニュアンスで薬のことを扱っているような気がします。しかし、その後、さまざまな薬害が知られるようになりましたし、薬物療法に対する警鐘も鳴らされるようになったかと思います。うつ病のことを言いますと、いまでは、重度から最重度のうつ病には薬物療法が必要で有効だが、軽度から中等度のうつ病にはプラセボ効果と同程度の効果しか見込めないというリサーチ結果もあります。数字にすると、うつ病と診断されて治療を受ける八割の方々に対しては、薬効が疑問視されているのです。このリサーチ結果は、DSM-Ⅳの立役者であるアレン・フランセスがよく引用していますね。
リスクと期待されるメリット、この二つについて十分にインフォームド・コンセントすること。カウンセリングであれ、薬物療法であれ、相談者に対して誠実に確かな情報を与え、そのうえで自らの自己決定を促す。インフォームド・コンセントがますます重要になりつつあるように思います。